子宮の中を見る子宮鏡 

内視鏡下手術の時代

今の医学は内視鏡全盛の時代となりました。胃や大腸のファイバースコープは日常の検査になりました。

ご存じのようにアメリカや日本の有名政治家が大腸ポリープなどで手術を受けてほとんど休むことなく政務に復帰しています。

腹腔鏡下手術は外科で胆のうや大腸、虫垂など頻繁に行われていますし、整形外科・泌尿器科などでも積極的に行われています。

腹腔鏡はあまりよく知られていませんがもともとは産婦人科領域で発展したのです。

今から50年も前に産婦人科で検査・手術が行われています。私の病院でも1969年頃から取り組んできました。

子宮鏡

子宮鏡は知らない方も多いと思いますが、胃のファイバースコープとよく似た器械で、子宮の中を覗くのです。あたかも高松塚の古墳の中を見るように狭い通路(子宮頚管)を通り抜けて玄室に相当する子宮腔を観察するのです。

子宮鏡は設備投資の割に保険点数が低いこと、適応となる疾患が多くないことなどのため普及が遅れています。

子宮鏡下に行われる手術

手術(経頚管切除術)に用いられるのはレゼクトスコープ(TCR)と呼ばれます。

(1)
子宮筋腫。わざわざお腹を切らなくても下から入れた子宮鏡で手術が出来るので入院日数も少なく術後の痛みも軽く済みます。
ただし子宮内腔に飛び出ているか、半分潜った状態の粘膜下筋腫に限られます。
直径6cm位のものまで手術可能です。
2回に分けて行うこともあります。
(2)
内膜ポリープ切除

(3)

子宮の中隔切除。
不妊症や流産の原因となる中隔(子宮腔を2つに分ける壁)を切除することによって劇的な効果を挙げる。
(4)
子宮腔の癒着を剥がす。
他の内視鏡と同様、習熟するためには少なくとも数十例の経験は必要であり、安易に行えば重篤な合併症も起こるので注意が必要です。



腹腔鏡について 

 外科系の手術に関して腹腔鏡下手術は現在もっとも発展している分野です。

腹腔鏡(スコープ)や鉗子などは直径が5〜10mm程度であり、これが入る穴をいくつか腹壁に開けるだけで手術が出来るので傷が小さくてすみます。

手術後の回復が早く、入院期間が短いというメリットがあります。

以前には考えられなかった手術も可能になってきました。

逆に開腹手術に比べて腹腔鏡では2-3倍の時間がかかる場合のあること、多量の出血など危険な場合のあること、術者が手で触る事が出来ないことなどデメリットもあるのです。

 残念なことに、最近いくつか腹腔鏡手術中の医療事故の報道がされています。

内容を検討するとやはり医師の不慣れが原因のようです。

こういった医療事故は医師にとって最初の10例に起こるといわれます。

よく習熟した医師の指導の元に経験を重ねる事が大切で、それなくして突然手がけるのは無謀であり、起こるべくして起こったと言わざるをえないでしょう。

 腹腔鏡で手術を受けるならその病院でどのくらいの手術件数があるのか、担当する医師が何例経験しているか、共に手術に入る医師の中に良い指導者がいるのかなどを聞くべきでしょう。

「流行の手術法だからやってみたかった」などという医師は避けなければなりません。

婦人科領域の腹腔鏡下手術

 子宮の中を見る子宮鏡とならんで腹腔鏡は子宮の周囲や卵巣・卵管を見るために婦人科領域で盛んに行われています。

むしろ外科など他の科より早くから取り組まれてきました。

私の病院では昭和40年代から約3,000例の腹腔鏡手術・検査を行ってきました。

不妊症の患者さんを多く診ているので、子宮周囲の癒着剥離、卵管の形成、子宮内膜症による癒着、チョコレート嚢胞、良性の卵巣腫瘍、子宮外妊娠、子宮表面の筋腫などを扱っています。

比較的安全な手術に限って行い、危険性があれば開腹術を採用するようにしています。

一般的に婦人科領域では子宮外妊娠の早期例や良性の卵巣腫瘍などは腹腔鏡で行うことが当たり前になってきました。

積極的に手術に取り組んでいる病院では子宮摘出、子宮がんの手術、リンパ節の摘出なども行われていますが、長時間に及ぶことや、出血のリスクも高くなるようです。

どんな手術でもリスクはあります。

腹腔鏡の場合には出血や腸管の損傷などが問題になります。

大切なのはこれらに対する処置、止血のテクニックが適切に行われることでしょう。