立ち会い分娩
分娩に家族が立ち会うのが普通になってきました。
私の病院でも家族立ち会いを認めています。
主役は患者さん。脇役はわたしたち。家族は観客のはずですが、いろいろな方がいます。
カメラ、ビデオなど数台持ち込むひとがいます。テレビクルーのように飛び回って撮影している。
後からひとに見せられないところまで撮る人がいます。
正直なところビデオは困ります。我々も忙しいのにビデオ写りを気にしなければなりません。
写真を撮るなら「イエーイ」と言ってピースサインを出すくらいのご協力はします。
赤ちゃんが生まれてママのお腹の上にだっこされてから三人で記念撮影をしましょう。
シャッターを押しますよ。
お産の痛み苦しみはご主人の予想以上のものがあります。
今まで聞いたことのないような奥さんの叫び声を聞くとびっくりしてしまいます。
旦那さんの役目は手を握って、汗を拭いて、飲み物を飲ませて「頑張れよ」と励ますこと。
日頃の家庭での力関係が現れる時です。
奥さんに奉仕するやさしい男性が増えましたね。
徹夜で患者さんに付き添って腰をさすっていたりするとご主人も疲労困憊。
180cmの巨漢でも普段血を見たことがない人は真っ青な顔をして分娩台にもたれてふうふう言っています。
なかには感動のあまり、おいおいと泣いて「あんた、しっかりしないかんがね」と逆に患者さんに励まされているひともいます。
帝王切開でも立ち会いを希望する方がいます。
さすがにひっくり返る人はいませんが、それでも時には「あれ、旦那さんは?」、しゃがみ込んでいる。
顔が青くなっている。私たちは忙しくてお世話する余裕がありません。
外国のかた、とくに欧米人は一般的に愛情表現豊かです。
「Ohhhhhhh!」。涙、涙、キスの嵐。日本人でも派手になりました。
まるで映画のキスシーンのような光景を分娩台の上で繰り広げてくださいます。
見ている私たちの顔が赤くなります。
不妊症でなかなか赤ちゃんができなかったカップル、長年の苦労がこみ上げて感激もひとしお。
外来からずっとお二人の苦労を見てきた私たちも「おめでとう、よかったね」と言ったものの、もらい涙で後が続かない。
実家のお父さんお母さんも涙。
私たちが産科医になってほんとに良かったと思う瞬間です。

