よくある誤解

よくある誤解外来で患者さんと話していると時々「えっ・・」と絶句することがあります。

よくある誤解を並べてみましょう。

誤解1

お産は満潮の時に!!

 

 今でも真面目に信じている方が多いですね。

「今日の満潮は何時かな」などと調べたり、「月の引力が・・」など解説してくれる人もいます。

全 く関係はないようです。

このことに関しては50年以上も前に東大で研究した方があったそうですが、全く無関係との結論が出ています。

以前は お産が進むと家族が近くの浜や河口に行って「潮の加減はどうかな」と見に行ったなどという話しも聞きます。

誤解2

お産は予定日までに生まれなければならない

 出産予定日は締め切りではありません。

意外にそう思っている人は多いようですが、予定日は最終月経から280日、その前後2週間に生ま れることが多いということから決められたものです。

現在は妊娠37週0日から41週6日(予定日の前3週間と後2週間)の間は正期産とよばれ て正常とされています。

予定日が過ぎると親戚や友人が「まだか、まだか」とか「予定日を過ぎとるのに、えーのか」などとプレッシャーをかけるので、妊婦さんも心配 そうな顔になります。

初産の場合には41週(予定日から2週間まで)までに生まれたほうが良いようですが、経産の場合には42週まで様子を 見ることもあります。もちろん慎重な管理のもとでの話です。


誤解3

お産は夜に多い


 脳の松果体から出る物質が体内時計に関与していて、その影響で夜間に陣痛がおこ
りやすいと言われています。早産の予防で入院している患者さんが夜中になると子宮収縮が起こり、朝になると軽くなることもよく経験します。

昼は気が紛れていても夜になるとお腹のことが気になるので痛みが強く感じられることもあるかもしれません。

通常の社会生活においては昼は8-10時間、夜は14-16時間と長いために、夜に多いと
言われることもあるでしょう。

夜の時間が長いために産婦人科の当直に追われる若いドクター達は「なんでこんなに夜ばかり生まれるんだろう」とぼやいたりします。

看護婦さん達も昼間の勤務は8時間、夜は準夜・深夜合わせて16時間、当然夜の方が長いから夜ばかりと言うわけで
す。陣痛の起こるのは若干夜間に多いにしても、分娩自体は必ずしも夜間に多いわけではありません。

これらのために24時間平均的に生まれても夜に多い事になってしまいます。

しかし帝王切開はほとんど昼に行われるし、いろいろな方法で昼間の人手の多い時間帯にお産を集中させるようにしている施設もありますから、最近の統計では昼に生まれる赤ちゃんの比率が高くなってきています。

性感染症に関する誤解

誤解1
男性の場合、直後に小便をすればよい。

男性の性感染症は最初に尿道粘膜に感染するものが多く、淋病やクラミジアの場合には時に洗い流されるかのように自然に消えてしまうこともあります。

それでも直後に小便をすればよいというのは俗説であてになりません。

尿道以外の粘膜にも感染しますから小便をしても移るときは移ります。

女性の場合には膣・子宮頚部に感染するので、尿の通り道とは異なり洗い流されることは期待できません。

誤解2
すぐ膣の中を良く洗うから大丈夫

時々膣の中を洗う習慣を持った人がいます。なかにはぴかぴかに磨き上げたかのようなものをみることがあります。

膣の中を洗いすぎてはいけません。

膣の中はデーダーライン桿菌という乳酸菌の一種や白血球などが他の細菌を殺してきれいにしているのです(自浄作用)。

これを洗ってしまっては効果が無くなり、かえって感染を起こしやすくなります。

誤解3
私は口でやってるから大丈夫

こういうのは風俗関係の女性に時々あります。

性感染症はオーラルセックスで口に感染するものも多いのです。

中にはトリコモナスのようにすごい口臭を起こすものもあります。

ヘルペスは本来口の1型、外陰部の2型と区別されていましたが、最近は混在してグループ分けが出来なくなってきています。

誤解4
前に罹ったことがあるから大丈夫。

残念ながら一度やったから大丈夫とは言えないのです。

再感染も起こります。

誤解5
クラミジアなんてたいしたことない。

確かに男性では尿道の分泌が少し増える程度の軽いことが多く、女性でも膣の分泌物が増える程度でほとんど無症状のことが多いのです。

本人が気が付かないうちに自然に治ってしまうことが大部分です。

ところが症状が出ないのに後で血液を調べると罹った証拠(抗体陽性)が残っています。

妊娠や不妊症で産婦人科に受診して血液を調べると陽性。さあどちらが先に罹ったのか、どちらが移したのかで喧嘩になります。

排卵に関する誤解
ちょっと専門的になるけど、一般によく誤解されていること---排卵に関することを
ならべましょう。

誤解1
卵は左右の卵巣から一ヶ月交代で排卵している。

卵巣は左右に一個づつありますが、左右交代で排卵していると思いこんでいる人は意外に多いのです。
実は卵巣は勝手気ままに左右から排卵します。

中にはいずれか片方ばかり続くこともあります。

誤解2
右の卵巣から出た卵は右の卵管
右の卵巣から排卵した卵は右の卵管に拾われる。

左の卵巣から排卵した卵は左の卵管に拾われると思いこんでいる人も沢山います。

お腹の中は左右に別れていると思っている人もあります。

通常、卵管・卵巣は子宮の後ろ側にあるダグラス窩とよばれる窪みにはまっていて、左右接しているので、必ずしも右は右と言うわけではないのです。

誤解3
基礎体温の思いがけないはかり方

基礎体温計は口の中で測定するものですが、脇の下で計る人がいます。

また普通の体温計を口に入れて計る人もいて産婦人科医をあわてさせます。

中には膣で計った強者もいます。

時々ヘンな体温表にお目にかかることがあり、びっくりすることになります。
誤解4
基礎体温---排卵の頃に温度が下がらないから排卵がない

正常のばあい、基礎体温は低温2週間、次いで高温2週間の2相を繰り返します。

低温から排卵が起こると高温に移ります。

排卵の前にストンと下がってから上昇することが多いのは確かです。

しかしながら低温に下がらずそのまま上昇することも多いのです。

多くの解説書で体温がストンと下がったところが排卵だと書いているために、下がったところがないと排卵していないと誤解しているひとが意外に多い。

誤解5
基礎体温---高温になったからもう妊娠しない

時々高温になって1-2日たってから排卵することがあります。

風邪とか虫歯で体温が上昇することもあります。

高温になってすぐは排卵前かも知れません。

誤解6
妊娠0週・1週とは

妊娠月数はかぞえで、週数は満で数えます。

現在はほとんど○○週と表します。これらは最終月経の初日から数えます。

排卵は通常14日目前後に起こりますから妊娠0−1週は妊娠していない時期なのです。

また、妊娠は通常月経が遅れて初めて診断されるので、妊娠4−6週でやっと「妊娠」となるわけです。

このへんもよく誤解されています。

 


子宮に関する誤解

 

誤解1
子宮はお腹の真ん中にある

子宮はおへその裏あたりにあると思っている人がいます。そうではありません。

お腹の中でも下の方、恥骨の後ろにあります。

妊娠して子宮が大きくなると、下腹から膨れ始め、妊娠6ヶ月くらいでおへその高さまで、妊娠末期になってポンポコ狸のように丸く膨れあがるのです。

子宮と恥骨の間には膀胱がありますから、圧迫されておしっこが近くなったり漏れてしまうことがあるのは当然なのです。

膣の一番奥に子宮の膣部と呼ばれる大きめの梅干しくらいの固い部分があり、そこに
子宮口が開いていてお産の時に赤ちゃんが出てきます。

そこで次のような誤解が生じます。

誤解2
膣の奥にこぶがある

時々心配して相談に来る方があります。

「中を手で洗っていたら何かこぶがあったけど、ガンではないかしら」、中には旦那様に「おい、こぶがあるぞ」と言われて飛んでくる方もあります。

もちろん子宮膣部を触っているのです。

誤解3
子宮を取ったら女でなくなる


手術でどうしても子宮を取らなければならなくなって「子宮切除の必要があります」と言いますと、「先生、子宮を取ってしまったら女でなくなるんでしょ。

いやですよ、そんなの」と言う方が少なくありません。

たしかに女性にとって子宮は子供を作る大切な臓器、そのように考えるのは無理もないでしょう。ホルモンからみると卵巣が残っておれば女性としての特質はなくならない。

子宮をとっても女でなくなるということは全くないわけです。

しかし上に挙げた子宮膣部がなくなって寂しくなったと夫に言われることもあるようです。

最近は子宮筋腫でも子宮を全部摘出せず、筋腫だけ切り取る方が良いと考える人も増えています。

誤解4
妊娠中にお腹をぶつけると赤ちゃんが死んでしまう

ご存じのように子宮の中は羊水という水で満たされており、赤ちゃんは水中生活をしています。

赤ちゃんは羊水で守られているので、少しくらいお腹をぶつけても意外に安全なのです。

私の診た患者さんの中には、自動車を運転中に交通事故に会って愛車は3回転して田圃へ転落し、ご本人は肝臓破裂の重症。手術をして一命を取り留めたのですが、お腹の中の赤ちゃんは全く無事でその後満期で出産したという方があります。

それでも打ち所が悪いと胎盤が剥がれて赤ちゃんが胎内で死亡することがあり、さらにDIC(汎発性血管内凝固症候群)と呼ばれる状態になると母体死亡もあり得ます。

最近問題になっている家庭内暴力で、夫が妊娠中の妻のお腹を蹴って赤ちゃんが亡く
なってしまったなどといういやな話もあります。

気を付けるのに越したことはありません。