ホルモン補充療法の安全性について
閉経期以後の女性に対するホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害の症状を軽くする、動脈硬化や骨粗鬆症の予防をするなどの効果があるので、米国では膨大な量が処方され、日本でも多くのかたが受けています。
夢のような良い治療法ですが、残念ながら乳がんの発生率が若干高くなるなどの問題点があり、このコラムでも以前に詳しく説明したことがあります。
最近、次のような研究報告が出て話題を呼んでいます。
米国立衛生研究所NIHの報告
NIHは1993年から1998年まで、50〜79歳の女性約16,000人を二つのグループに分け、一方にはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲスティン(黄体ホルモン系)というホルモンを、他方にはプラセボ(偽薬)を処方して検討しました。
心疾患予防効果と乳がん増加の有無を検討することが主目的で、平均5.2年間投与しています。
ところがこの治験を7月9日に突然中止すると発表し、発表予定であった論文をインターネットで直ちに公表しました。
この発表は全米の新聞やテレビで広く報道され、日本でも10日の朝刊で報道されました。
この調査で、ホルモン補充療法を受けたグループでは骨粗鬆症による骨折や大腸がんの発生率が減ったものの、心血管疾患、脳卒中および乳がんが有意に増加しました。このためメリットよりもデメリットの方が大きいとの結論を出しています。
ただし総死亡率には有意差がみられませんでした。
これらのリスクは非常にわずかであり、一人一人の女性に与える影響は少ないと考えられますが、長期間の多数の女性への影響を考慮してNIHは治験を中止したものです。
日本産婦人科医会は以下のような同時併用療法に関するガイドラインを提示しました。
1. 現在長期的な(4〜5年以上)治療を行っている患者さんには直ちに中止する必要はありませんが、継続する場合は乳がん、心血管疾患、脳卒中等に十分注意し、健診を定期的に行って早期発見に努めること。
2. これから開始する場合はそのリスクと有益性について患者さんによく説明すること。
3. 更年期障害(ほてり、のぼせ、発汗、腟乾燥等)のための短期間の治療は、有益性がリスクを上回るので有意義と考えられます。
米国と日本では食生活・体質の違いがあるのでそのまま研究結果を当てはめることはできないかもしれません。
この若さと健康を維持する大変良い治療法にも有益性の反面リスクも有ることを充分理解した上で医師にご相談下さい。
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