性教育のありかたについてー1
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性の乱れが社会現象となって子ども達の性教育の重要性がますます大きく叫ばれるようになっています。
ところが性教育と一口に言っても対象によって、教育する立場によって様々な意見があり、統一のとれるものではありません。
産婦人科医の性教育にしめる役割は今後更に重要になると思われます。
というのは学校の現場で性教育を担当する先生方(通常は保健の先生)が専門家の手を借りたいと要望しておられるからです。
ところが産婦人科医の間でもいろいろな意見が出て、先日も医師会の委員会で激論になりました。
以下に二つの考え方を提示します。
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【道徳教育派 A医師】
最近は性教育の場で、具体的な性交や避妊法など、赤裸々に教える風潮があるが、これは行き過ぎである。
たしかに若い世代の性風俗の乱れは目を覆うばかりで、一部の遊んでいる子供達に避妊法について教えることは必要であるが、本当に良い家庭で純真に育っている子ども達に学校教育の場でそこまで教えなくても良い。
返って寝た子を起こすようなものである。
性教育は大切であるが基本的には性道徳の教育であるべきである。
そこでA医師の性教育は性感染症の恐ろしさ、中絶の恐ろしさを説明し性行為そのものを避けるようにする、いわゆる恐怖心から性を遠ざける純潔教育である。
世界的に見ても以前よりは純潔教育と呼ぶべき教育が見直されている。
米国でも大統領をはじめとして乱れた性風俗を正すべきと純潔教育の見直しが始まっている。(もっともこれには根底に人類滅亡にも繋がるエイズに対する恐怖心がある。)
もともと、欧米各国でも非常に保守的な地域や韓国など、厳しい教育で純潔を守らせるようにしている。
複数の異性と性交渉を持つような風潮は欧米の大都市の誤った風俗が世界の標準であるかのごとくに伝えられた結果であろう。
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【性教育派 B医師】
たしかに性行為など無関係で避妊法を教える必要のない子ども達も多い。
しかし現実に産婦人科の外来に性感染症や妊娠で訪れる子供達はワルばかりではない。
「良い家の子」が親には内緒でと言いながら受診している。
親は知らない。うちの子に限ってと思っている。
昔は「真面目なつきあいとは結婚まで性行為などしないこと」であった。
今の子たちは「不特定多数との性行為や援助交際などはいけないが、特定の異性とだけ性の関係を持つことは真面目だ」という。
週刊誌、漫画雑誌・テレビ・ビデオなどはこれでもか、これでもかと子ども達の頭にたたき込んでいる。
以前は彼に好かれたいから体を許す女の子が多かったが、最近は気持ちいいから自分から求めるという子が増えている。
10代の妊娠中絶が増加し、クラミジアなど性感染症の増加も著しい。
こういった若い世代の奔放な性を見ると、現実に即した予防的な教育の必要性が痛感させられる。
純潔教育の重要なことはよく判っているし、子供達にも話しているが現実はそれでは追いつかないのだ。
教育や医療の現場で、妊娠して悩んでいる子供達に接する教師や産婦人科医の間から徹底して教育をしなければという意見が出てくるのは当然であろう。
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私も基本的にはA医師の考え方を理解できますが、「そんなのんびりしたこと」と切実な感想も持ちます。
妊娠して外来で「なにも知らなかった」と泣く子を見るとB医師の考えもうなづけます。
AとBの狭間で産婦人科医の気持ちは揺れ動くのです。
やはり十分な性教育をして「NOと言える女の子」を育てるのが大切ではないでしょうか?。
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性教育のありかたについてー2
ここまでに、性教育に携わる産婦人科医師の間にも「あまり具体的な教育は避けるべきで純潔教育の原点に戻るべきとする道徳教育派」と「無知から来る悲劇を避けるために十分に知識を与えるべきとする性教育派」の二つの立場のあることを述べました。
産婦人科医は若い人たちの性の問題に直面する機会が多いのです。
日本産婦人科医会の「10代の人工妊娠中絶についての調査」で以下のような結果が出ています。
産婦人科施設を訪れて人工妊娠中絶を受けた10代の女性626人のうちに14歳が11名(1.7%)、15歳が18名(2.9%)含まれていた。
若年化はますます進んでいる。
これらの女性のうち、時々避妊しているは55.4%、ほとんどしていないが31.0%、常に避妊しているは10.5%にすぎない。
今回の妊娠で失敗した避妊法は膣外射精:24.5%、コンドーム:19.1%と答えており、正しい知識を持たないことが判る。
避妊知識はどこで覚えたか、学校:78.2%、雑誌・TV:45.0%、友達:37.2%。
学校教育の場での努力は評価されるが、残念ながら正しく理解されておらず、更にマスコミや友人からの誤った情報が多い。
詳しく知りたいですかという質問に56.8%が知りたいと答えている。
相談相手は友達が70.0%とトップであり、以下、親・兄弟と続いた。
家庭での性教育が不十分な現在、学校に於ける積極的な指導が必要とする考え方も頷けるでしょう。
日本産婦人科医会では性教育を行う医師が利用できるよう性教育の材料として性交、避妊法、性感染症についても説明するためのスライドを作成しています。
更に積極的なグループは、厚生労働省のリプロダクティヴェヘルス研究会で討議をし、母子衛生研究会で中学校向けに「ラヴ・アンド・ボディBook」を作成して全国の教育委員会に 配布しましたが、某国会議員や一部マスコミの激しい攻撃にあって、配布中止・絶版となりました。
文部科学相が避妊法としてのピルの記述を問題視したと聞きます。
厚生労働省と文部科学省の立場の違いも関与するのでしょうか?
結局、教育の不備を産婦人科医がしりぬぐいさせられています。
産婦人科は妊娠して 困ってから来るところでなくよき相談者でありたいと考える医師も多いのです。
私が中学校で性教育をさせていただく場合に心がけているポイントは以下のごとくです。
まず赤ちゃん誕生の写真と泣き声を聞かせる。
セックスが太古の昔から類人猿・原人・新人類と発展してきた歴史にとても大切なこと。
これからも人類の歴史を繋いでいくために重要であること。
セックスは遊びではなく崇高な行いであること。
お互いに相手の身体を大切にし、特に心を大切にすべきこと。
赤ちゃんを産む女性を大切にすべきこと。
これらのことを熱心に述べてから妊娠、中絶、性感染症に話を移し、避妊法についても丁寧に説明するようにしています。
私の講演を聞いた感想を求めると、知っていることばかりで面白くなかったと言う中学3年生がいるかと思えば、気持ち悪かったと青くなる女の子もいます。性教育は基本的に個人教授であり、本来なら家庭での教育が中心であるべきと思いますが、現実には家庭ではほとんど教育されず、週刊誌やビデオ、友人達からの誤った知識で野放しになっているのではないでしょうか?。
理想的には性教育の必要な子どもと必要ない子とを区分することが良いのですが、これが難しい。学校教育の場では対象者(中学・高校)、学校の雰囲気等によってA・Bの比重を変えなければと考えています。
皆様はどうお考えでしょうか?